おぬし、時間を止めておるな。
他の人間とは明らかに違う服装で、奇妙な髪型の人間が声をかけてきたが、俄かにその意味を理解することはできなかった。
「そのスタイル、1960年代の鳩とお見受けする」
全く意味がわからなかったが、彼の話を要約するとこうだ。
「自分の時間を止める能力があるものは、見た目の時間も止まっている。自分もその能力者である」
「周りの鳩の寿命が短いと思ったことはないかね」
確かに、うすうす気づいていた。
自分だけ長い時を生きていることに。
「私もこのように、古いスタイルを保つことで二百年以上生きている。流行に乗ったとき、私の時間は流れ、老いて死ぬのだろう。まだその決心がつかぬ為いつまでもこのままだ。いつ救いがあるのだろうか」
彼は死を救いだと表現しながら、腰の帯にさした古い武器をさすった。
私の、洋服のように着替えることはできないこの模様が、時代遅れだとは気づかなかった。しかし確かに、私は周りの仲間に「置いていかれ」ているのだ。救いはあるのか。老いていくな、置いていくな。不安は急に現れた。
その後、私と彼は長い時を共に過ごすことになったのである。