「え? じゃああなたは区切りの度に何か変わるの?」
そういって苦笑する彼は、記念すべき「三年以上生きた百億羽目」のハトだ。
「特になんだということはありませんが、百億羽目はすごいことなのでお伝えしたのですよ」
鳩記録調査委員会に所属する私は彼に記録を伝えるのが仕事であるから、本鳩がひねくれていようと事実を伝えて祝わなくてはならないわけだが、あまりにもバカにした態度をとられ、ムッとした気持ちを隠せなかった。
「そりゃ、私が何か成した上でなら喜べますけど、知らずにただ生きていただけで、今日で三年だということすら気づいていなかったんだから、何とも思いませんよ。明日も今日と変わらず生きていくだけです」
「十億だって相当すごいけど百億もまたすごいのです。あなたは五年生きればまた違う記録を残せますよ、何羽目かはわからないけど五年生きたハトとしてね」
半分やけくそでそういい捨てると、彼はまじめな目をして
「そうか、今日それを知ったからには、私の努力で五年目を迎えるという目標ができたな。確かに区切りだ、これからも続くという事実の」
そう、単なる通過点なのだ。