ハトは透明な存在で、どこへでも行ける。
ハトがいたって、もはや誰も気にすることはない。もし私がハトになれたら、いきたい場所はたくさんある。ヒトである私が行けない場所だ。
人種も、年齢も、性別も、金持ちか、頭がいいか、弱いか、誰と歩いているか。周りからの評価が悪ければ、あっというまに私はとらわれてしまう。ヒトはヒトを常に狙って、弱いものから奪おうとする。ヒトという入れ物には、死や暴力が付きまとうのだ。
ハトはいつでも、だれとでも入れ替わることができるように心がけてきた。どこに住んでも、どこを歩いても誰も気にしない。いつもの同じハトだと思うだけだ。かわりがいくらでもいるからこそ、誰も失われない世界を手に入れている。
ハトは皆で同じように生きることで、自らを透明に仕上げたのだ。