転生というのは本当にあるらしい。
ただし、転生前の記憶はおぼろげで、殆ど覚えていなかったり中途半端に覚えていたりするものだ。
彼女も出来ず、童貞のまま事故で死んだ僕は転生の権利を得た。
そこで、神様にこう言ったんだ。
「出来れば美少女に生まれ変わりたい。そして綺麗な彼女を作りたい」
ってね。
そして、一つ目の願いは叶った。
物心ついた頃には、鏡の中にいる美少女――まぁ、自分なんだけど――に見とれていた。
親はそれなりに裕福で、千絵と名付けられた「私」は、よく可愛らしい服を買ってくれた。
体の良い着せ替え人形のようだったが、鏡の前でモデルよろしくくるくると回り、その現状に満足していた。
前世の記憶がおぼろげに残っているので、私が元男だというのは認識していたけれど、鏡の前で自分の姿を見ていれば満足出来た。
元の自分の容姿はもう思い出せないが、きっと容姿にコンプレックスがあったのだと思う。(続