手に持って食べていたポッキーの袋から、一本が抜き取られた。
「こら」
「一本くらい、いいだろ」
たかがポッキーの一本で文句を言うのも、心が狭すぎる。
「一本だけだよ」
「それ好きだよね」
これは、つぶつぶいちごポッキー。
「うん」
「いちご味ってさ、いちごじゃないよな」
「え?」
「お菓子の味って感じがする」
などと言いながらまた袋に延ばしてきた手を、軽く払う。
「私はこれ好きなんだけど」
「別に嫌いじゃないけどさ」
それだけ言うと、離れていった。
好きじゃないならなんで食べるの?
嫌いじゃないから食べてあげてもいいの?
つぶつぶいちごポッキーを、かじる。
ハートの形をした断面図。
好きじゃないけど、嫌いじゃない。
私に言われたみたいな気持ちがした。
本物のいちごではなくて、いちごとは似て非なる別物で。
だから簡単に抜き取られて、簡単に食べられて。
本物のいちごだったなら、大事に食べてくれるのかな。
つぶつぶいちごポッキーを、かじる。
けれど私はいちご味、なんだ。
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sayaka (sayaka@pawoo.net)'s status on Tuesday, 15-Jan-2019 22:41:39 JST sayaka
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