梨木香歩「海うそ」ビブリオバトル前に読破。前半7割で1930年頃の、後半3割で1980年頃の(推定)、九州の島を旅した研究者のフィクション。
地理学者の卵?として訪れたその島の自然の描写が、とにかく美しい!自然の息吹や民俗学的な観点の活気、地理地質学的な面白さと、主人公のその面白さを何も知らない読者が共感できる巧みな文章。主人公が魅入られるのも分かる。
そしてその自然がぶち壊されてしまった1980年代。さっきまで読んでいたものが無い主人公の虚しさに、思わず泣いてしまう。1930年の時点で暮らしていた人の中には、戦死したり廃村で村を去ったり、老衰していたり。主人公自身も衰えていて、さらに主人公の抱え続けていた暗さにも焦点が当たる(むしろ前半は主人公の暗さより自然に焦点があった)。
物語の構成も、相当な文献を参考に新たに世界を作る作者の力量も、植物や地理描写も、全てが他にない素晴らしさだった。
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