Abry, J.-H.(2011), `Politicized Digressions in Manilius', in Green and Volk(edd.), Forgotten Stars: Rediscovering Manilius’ Astronomica, Oxford, 222-234.
マーニーリウス『アストロノミカ』に見られる3つの脱線的挿話が同時代の建築物・記念碑とイデオロギー的に深い関係にあることを論じる研究.すなわち第1巻の銀河とそこに昇った歴史上の偉人たちの列挙はアウグストゥス広場(Forum Augustum)に奉納された将軍たちの記念像と,第3巻で綴られる季節と緯度による日中時間の変化はカンプス・マールティウスに建てられたホーロロギウム(Horologium)と,そして第4巻の地誌描写はアグリッパの「地図」と浅からぬ関係があるとしている.特に三番目の点については確実な立証に成功しているとは言い難いが(アグリッパの「地図」が具体的にどういうものであったか不確かである以上やむを得ない面がある),十分ありうる且つ魅力的な仮説として認めうる.