Nicolet, C.(1991), Space, Geography, and Politics in the Early Roman Empire, Ann Arbor: The University of Michigan Press.
共和政から帝政初期というローマ史の転換期を対象に,「ローマ人の空間表象の歴史」と「地理的空間を行政的に利用することの歴史」という二つのアプローチを通して,アウグストゥス時代の新しい体制が中心から周縁に至るまでの領土的連続性をもった支配をどのように確立したかを解明しようとする.
アウグストゥスの『業績録』が持つ地誌的側面(1章),貨幣や建造物に託された帝国の支配の象徴的な意味合いの分析(2章),帝政初期における地理的知識の水準(3章),プリーニウスによって言及されているアグリッパの「地図」の実態と意図(5章)が特に面白かった.