波のように繰り返しよせてはかえす感情は、いつのまにか激しい怒りに変わり、とても押さえていられないほどになってしまった。めちゃくちゃに羽ばたいてみても波の大きさに翻弄されて振り払えない、この怒りをどこへ向ければいいのか。
怒りはおさまらないが疲れてしまった私は、駅前の大きな木の枝で羽を休めた。また波のような怒りが揺らめいて、少しずつ大きくなってくる。くちばしを交差させて目を固くつぶった。
「どうした、シブイ顔してるな?」友鳩が声をかけてきた。いつの間にか隣にいたのも気づかなかった。私から堰を切ったように怒りの言葉があふれ出た。友は突然のことに圧倒されて、少し首をすくめてこちらを見ていた。
言いたいことをすべて言い終わってぐったりしていると、怒りを聴いていた友が淡々と「つまり、おまえが毎日眺めている掲示板の貼り紙の内容が気に入らないんだろ? もうその掲示板を見ないほうがいいよ」と言った。「その通りだな。単純な話だった。自分には関係ない話なのになんでこんなに怒ってたのかな」あの掲示板にはもう行かないでおこう。