その後、死の寸前に激痛と恐怖を感じたまま張り付いた相貌と、
グチャグチャに砕けた息子の亡骸を見た時の辰巳と"義理の母"の様子については―――実に口惜しいが割愛する。
何故ならばこの話の本題は此処ではなく、此処からであったから。
■ ■ ■ ■ ■ ■
順平が痛みと衝撃を越えたその先に広がっていた光景。
「海岸……?」
冷たく澄む海と空、プライベートビーチの如く寂れた砂浜。
―――見覚えがある。
次に紡ぎ出した言葉はそれだった。
そして何時もながらの愚鈍な思考が、今日はやけに冴えている。
大自然のロケーションが脳を刺激したのだろうか?
「僕夏だ」
その言葉はするりと口から出て、自分でも合点がいった。
拙いがありがちな表現で述べるとするならば
―――浜崎順平はいつか途中で投げ出した、あのゲームの世界へと、美富島へと"転生"したのだ。
「おじさん、この辺では見ない顔だね。どしたの?」
順平は声の方向へ振り向いた。見覚えのある光景の次は、見覚えのある少女の姿が目の前にあった。