不動産事業を行うハウスコムが運営するメディア「Living Entertainment」に6月29日に掲載された、埼玉県三郷市立彦郷小学校の取り組みが、ネット上で物議を醸している。児童に本を読んでもらうための施策の1つとして、学校の図書館の貸出記録のデータベース化を行い、 「児童ごとの読書傾向を学校側が把握できるようになり、今どんな本を読んでいるのか、あるいは1ヶ月で何冊の本を読んでいるかなどを的確に把握」 していると紹介されたためだ。記事では、児童の貸し出しデータを「担任の先生に配布することで、個別指導を行ったり、時にはオススメの本を推薦することもできる」とも書かれていた。 日本図書館協会の「図書館の自由に関する宣言」では、「読者が何を読むかはその人のプライバシーに属することであり、図書館は、利用者の読書事実を外部に漏らさない」と記載されている。そのためこの取り組みには「これあかんやつ」など、プライバシー保護の観点から問題があるのでは、という指摘が多数上がっている。 「担任に伝わるのは、各本の貸出回数と児童が借りた冊数だけ。タイトルやジャンルは知らされない」 校長先生に話を聞きました。 しかし、キャリコネニュースが記事中でインタビューに答えていた同校の鈴木勉校長に話を聞くと、記事の内容と実際の運用には、やや差があるようだ。記事を読んだ人の中には、「児童ごとの読書傾向を学校側が把握」という記述を、誰がどんな本をどのくらい読んでいるかという意味だと受け取った人が多いが、実際には、 「担任に伝わる情報は、それぞれの本の貸出回数と、そのクラスの各児童がどれくらい本を借りているかといった数値だけです。児童が読んでいるジャンルや本のタイトルなどの具体的な内容は伝わっていません」 と言う。PCでの管理も、「あくまでも事務の手間を省くためのもの。児童の思想や読んでいる本を観察するためのものではありません」と説明した。 記事中には、データを活用して担任が児童に個別指導を行っている、という記載もあったが、これに関しても誤解が広がっている。 「個別指導というのは、貸出冊数が極端に少ない児童に『できるだけたくさん本を読もうね』『頑張ろうね』などと声をかけることです。読む子は放っておいても読みますが、読まない子はまったく手に取らないので」