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佐々木将人 (sasakimasatohkd@lufimianet.jp)'s status on Tuesday, 26-Jan-2021 17:55:52 JST 佐々木将人 ルフィミア「実際に届け出て受理されたり,修正の上で受理されたりなんて話を聞くんですけど,これどうなんですか?」まさと「まず結論から言っちゃうと,総務省内(正確には担当する各地方総合通信局内)でも「届出が必要なので,その旨周知徹底をはかる」という統一見解は出されていない,ところに尽きると思います。」ルフィミア「まさと先輩はどうします?」まさと「出さないね。後で述べるとおり届出が不要だという見解に立っていることが大きいし,届け出たところで恩恵的なものが得られる訳ではないですし,負担ばっかり増えますからね。」ルフィミア「総合通信局の内部の話がよくわかりましたね。」まさと「これ,2021年1月18日に @sumiyaki さんが総合通信局に電話で聞いてくれて,「白黒つけるには、法令適用事前確認手続が必要そう」という回答を引き出した上で,それ以上突っ込まないで引き返してくれたというのが大きかったんだよね。あれは見事でした。(参照 https://lufimianet.jp/notice/A3MH4WsmMtYB5eMTZY )」ルフィミア「法令適用事前確認手続というのはなんです?」まさと「詳細は https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/kakunin/kakunin.html を見てほしいんだけど,たとえば従来なかったような事業を起こそうとした場合に法令上許されるかどうか,また,行政機関が行政指導を行わないかどうか,行政機関に照会して万全を期そうとしても,行政機関が照会に応じてくれなかったり,照会の回答とは異なる判断を後になって示すことがあったりして,それが新規事業への障害になっていたということがあって,行政の公平性と透明性を保つために導入されたものなんです。これを利用すると,一定の手順を踏んで照会すると,行政が必ず見解を示すとともにそれを公表することで,あとで「話が違うじゃないか?」というのを言いやすくしたものです。 で,これが必要だと回答したってことは,まず従前この問題について法令適用事前確認手続はとられていないし,第2に何らかの統一見解が内部に存在しているのであれば,そのとおりに回答すればいいので,それもないってことがわかったのです。 で,この2つがわかると,それまで断片的に言われていた・届出をして(修正を求められた上で)受理された例がある(少なくとも2件確認)・届出が必要かという質問に「確認しないとはっきりは言えないが,出してもらったほうがよい。」という回答を電話でもらった(上記)というのと,不要という回答をメールでもらったという例がそれぞれある・届出をしていないとして届出を求められた例は出てきていないが全部,「届出が必要なので,その旨周知徹底をはかる」という統一見解はないゆえのことと説明がついたという話なのです。」ルフィミア「でも,電気通信事業法16条1項は,「電気通信事業を営もうとする者は……届け出なければならない。」となってますよね。これって「電気通信事業」ではあるけど,無償で行う場合には「営む」ではないから届出義務がない……ってことじゃないんですか?」まさと「そう考えると,総合通信局が悩む必要は本当はないはずなんだよね。「非営利なら届出不要ですよ」と明快に答えればいい。法令適用事前確認手続が必要そうなんていう必要は全くないし,まして「確認しないとはっきりは言えないが,出してもらったほうがよい。」なんて答にはならないんです。でも,実際には悩みを見せている。これはやはり,分散型SNSサーバーの運営が「電気通信事業」なのかという根本問題に答を出せていないので「そもそも電気通信事業ではないから届出不要」なのか「電気通信事業であるけど非営利だから届出不要」なのかどちらかだとは言えない状況にあるんだと解するべきです。このあたりの事情を説明していきましょう。」日本電信電話公社が民営化されるに際し,それまでの公衆電気通信法を改正して誕生した電気通信事業法では,少なくとも平成13年の状態では,2条の定義規定について現在とほぼ一緒の規定をもっていました。2条では通信と放送を基本的に区別していません。放送は通信の一種であるという前提を採用しています。しかしながら一方で,歴史的には,情報を伝えることについては,主に電波を使い,広く多くの人に伝えることを目的とした「放送」と,特定の少数にだけ伝え,それ以外の人にはむしろ秘密にしたい「通信」とは違うものであるという前提で政策や法律が決定されていた時代が長く続きました。この意味での「通信」に入る代表的なものは「郵便」ですしまた「電話」でした(どちらもかつては逓信省が扱っていたというのが象徴的です。逓信省は後に郵政省と電気通信省に分割され,電気通信省は日本電信電話公社から現在のNTTグループへ,郵政省は現在の日本郵便グループへ変わります。)このあたりの事情を示す資料が官邸に置かれた「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)」の第9回会合に提出された資料7「通信・放送の融合について」 https://www.kantei.go.jp/jp/it/network/dai9/9siryou7.html です。中を読むと「放送は通信の一種である」としながら,放送と通信を完全に別物として扱っているということがよくわかります。放送行政・通信行政に携わっている者にとっては,通信と放送は別物であるという認識が根強くあるものと思われます。この認識を前提に,総務省が作成した「電気通信事業参入マニュアル[追補版]」 https://www.soumu.go.jp/main_content/000477428.pdf をもう一度読み直してみましょう。本来この種のマニュアルは典型例を示すと同時に,境界事例についてもある程度の指針を示すものでなければならないはずなのですが,例示されている例が見事に,通信と放送とを分けた時に「明確に」通信に入るものばかり,言い換えれば「特定の少数にだけ伝え,それ以外の人にはむしろ秘密にしたい」ものばかりなのです。考えてみれば,電気通信事業法の各規制もまた,「特定の少数にだけ伝え,それ以外の人にはむしろ秘密にしたい」を前提に,「通信の秘密の保護」「検閲の禁止」をうたい,俗な表現でいう土管論(電気通信事業者は通信の内容にかかわらず,可能な限り確実に相手方に通信を届けることを目標とし,そのサービスを公平に安定的に提供すべきであるという考え方)に基づいており,放送については別途放送法を定めて対応しているわけです。さて,ここで分散型SNSです。分散型SNSって通信なのでしょうか?電気通信事業法を単純に文理解釈していくと電気通信にあたるし,そのサーバーを運営することは電気通信事業にあたるし(事業の要件には営利性は要求されない),「営む」という言葉を営利性に限定せずに「事業を営む」を「事業を行う」と同視すれば,サーバー管理者には届出義務があるという結論になってしまいます。それがおかしいとなると,「営む」については営利性を持つもの,言い換えれば金銭的な利益を目的とするもの(会社法でいう会社と同じです)に限定することで,大多数の非営利目的のサーバー管理者を除外するとか(もっともこの場合でもサーバー管理者には通信の秘密の保持と検閲禁止の義務が課せられます),電気通信設備について「自分で設置した」という限定解釈を加えることで,いわゆる自宅にサーバーを設置する場合以外(ホスティングサービスやVPS,レンタルサーバー等の利用)については電気通信事業者にそもそもならないなどの考え方が出てくることになります。このあたりの議論が,いまだ整理されておらず,また整理する必要もなかったことが,「通信と放送は別物である」という認識から抜けられない行政の現状にいたっているのでしょうし,総務省の外部に対する説明の現状にいたっていると思われます。話を元に戻しましょう。分散型SNSは基本的には,サーバー管理者が管理するサーバーにおいて投稿を受け付け表示した上で,その投稿を他のサーバーに渡して他のサーバーでも処理してもらうという形式をとっています。投稿を受け付けて表示するのに,その投稿の秘密を保持しなければならない……というのは何かおかしくありませんか?また,投稿を受け付けて表示するというのは,従来からある電子掲示板サービス(BBS)にも共通します。BBSの運営が電気通信事業にあたらないことについては現在異論のない状況です。さて,他者に損害を与える類の投稿がBBSになされた場合のBBS管理者の法的責任については,ニフティサーブ事件判決というのがあって,「全部を事前にチェックする必要はなく,通報があった時にチェックすれば足りるし,チェックの結果問題があるとしても,議論の進展を待つのが相当だとして,議論の行方を若干見守ることも許される。それをすぎると問題の投稿を削除する「条理上の」義務がある。」という判断が示されています。これ,通信の議論でしょうか?明らかに違いますね。またサーバーで表示した後で他のサーバーに情報を渡す部分を通信とするのも考えられますが,他のサーバーもまた受け付けたものを一定の手順で表示するのです。やはり通信とは言い難いでしょう。「ダイレクトメールは通信ではないか?」それも確かに機能的にはごもっともです。しかし,少なくともActivityPubを利用しているサーバーにおいては,情報は電子メールを拡張したフォーマットでやりとりされており,DMと言えども公開範囲を他の投稿とは変えて指定したものにすぎないわけです。その点では他の公開範囲の指定と本質的に変わるものはありません。単一のプロトコルで情報のやりとりをしている時に,その公開範囲の指定如何で通信になったりならなかったりするのは,それはそれで適当ではありません。googleが単に検索結果を機械的に表示しているだけで,表現行為にはあたらないと主張した訴訟では,日本でもEU諸国でも,そのような主張は否定され,表現行為に該当する=googleも表現の自由の主体であると判断されています。アメリカの通信品位法230条は,ある意味土管論にたった規定とされていますが,土管論を徹底させる方向での改正を目指す動きがある一方で,日本やEUに合わせて土管ではないとする改正を目指す動きもあり,いわゆる大手SNS企業のトップが議会で「自分たちは土管ではない」と言わされてしまうところまで来ています。このように分散型SNSのサーバーの管理者は,サーバー管理者自身の表現の自由の主体であると評価されている状況なわけなのですが,その者に対し,電気通信事業にも当たるとして通信としての規制をかけ,「通信の秘密の保持」や「検閲の禁止」を義務付けるのは,表現の自由の主体であることと矛盾します。端的に言うと,「発表したい」方向の表現の自由と「発表されたくない」方向の通信の秘密の保持は方向が全く違うし,方向の違う義務を同時に課すのは矛盾なのです。では,この矛盾をどう解決するか?通信としての規制をかけることから矛盾がはじまっているのですから,通信としての規制はかけないこととする。すなわち,電気通信事業法2条1号の「電気通信」の定義を限定解釈し,そもそも通信ではないものは電気通信ではない。発表を目的とするものは,発表されないことを目的とする通信ではないとするのが相当だと私は考えているのです。ルフィミア「だから,分散型SNSのサーバー管理者は,電気通信事業法による規制の対象外であり,16条1項の届出義務を負わない……ということなんですね。」まさと「正解!」ルフィミア「でも,まさと先輩,現に「図書館でお茶会を始めて国際法茶館に計画」lufimianet.jpをホスティングで運営しているじゃないですか?当局から届出を促されたらどうします?」まさと「現状だとたぶんないと思うけど……。たぶんその時の体力だと思う。」ルフィミア「体力……ですか?」まさと「そう,体力。割と自信のある立論だから,行政訴訟で争ってみたい気もする一方で,届出はたぶんそんなに大変じゃないはずなんですよ。一応行政書士持ちだし,1アマと1陸技と電通主任持ちで,アマチュア無線局も持っているから電監とは取引あるし。そうすると,他にやりたいことがあったら,あっさり届出そうな気もするし,その時の状況だろうね。」ルフィミア「……まさと先輩,意外にいいかげん……。」 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sumiyaki (sumiyaki@plr.ph3j.com)'s status on Tuesday, 26-Jan-2021 18:23:27 JST sumiyaki @SASAKIMasatoHKD ありがとうございます。大変申し訳ないのですが、法令適用事前確認手続が必要かもしれない、というのは、全体としての私の印象で、担当者が直接発言したことではないのです。私が必要ですか、と聞けばよかったのですが、私がすぐ引き下がってしまったので。そのあたりのことを以前のやりとりで、私がもう少し早く気づけば良かったのですが。ただ、印象としては、P2Pと分散SNSではかなり異なっていた、Mastodonなどではちょっと歯切れが悪かったということです。グレーゾーンですかと私が言ったのに対して、どちらかというと肯定的でした。というようなことを、ちょっと補足させていただきます。 In conversation permalink -
佐々木将人 (sasakimasatohkd@lufimianet.jp)'s status on Tuesday, 26-Jan-2021 18:40:52 JST 佐々木将人 @sumiyaki 了解です。担当者の発言ではないという点で修正をかけておきます。申し訳ないのですが,元の投稿は削除しておいて,その修正をかけたものを再度投稿します。 In conversation permalink sumiyaki likes this.