ゼロは明確に偶数である。このことを数学的に証明することは簡単であり、それを理解することも容易である。ゼロが偶数であることを証明するもっとも簡単な方法は、それが「偶数」の定義(2の倍数である整数)に当てはまることを確認することである。すなわち0=0×2である。結果的に、ゼロは偶数の特徴であるような性質をすべて持っている。例えば、0は2で割りきれる。0の両隣は奇数である、0はある整数(0)とそれ自身との和である。0要素の集合(空集合)は、二つの等しい集合に分割できる、等々。ゼロは、他の偶数が満たすべきパターンにもまた合致している。例えば、偶数-偶数=偶数のような算術における規則は、0が偶数であることを要求する。
しかしながら、一般社会において、ゼロの偶奇性を認識することは、他の整数の偶奇性に比較して困難が伴い、混乱の元になることが知られている。ある研究によれば、小学校の生徒たちは半数程度がゼロが偶数であることを正しく認識できなかった(後述)。また、数学専攻の学生や数学の教師でさえ、0が偶数であることに対して、しばしば誤った認識を持つ(後述)。これは「ゼロ」という概念の特殊性や、「偶数」という定義の誤解に由来するとみられ、反応時間試験においても大部分の人々は、0が偶数と認識するのに要する時間は、2,4,6,8,…などより明らかに遅かった。
本記事では、このようにゼロの偶奇性に対する一般的な認識に関して研究された、あるいは発生した事象を中心に解説する。
ゼロが偶数である理由
「偶数」の標準的な定義は、ゼロが偶数であることの直接的な証明に利用できる。ある数は、それが2の整数倍であるとき「偶数」と呼ばれる。例えば 10が偶数であるのは、それが2×5に等しいことが理由である。同様にゼロも2の整数倍である。すなわち0=2×0。ゆえに0は偶数である。なぜ0が偶数であるのかを形式的な定義無しに説明することも可能である。
以下の説明は、数の概念の基本的な観点から、ゼロが偶数である、という命題を解明する。この基本的観点は、偶数の定義それ自身、およびその定義がゼロに対して適用可能であることに対する論理的根拠を与えることができる。
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