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佐々木将人 (sasakimasatohkd@lufimianet.jp)'s status on Saturday, 06-Feb-2021 11:21:46 JST 佐々木将人 この話,noteの「悩める高校生よ、「心理学部」を選ぶのはまだ早い」by べとりん|cotree https://note.com/piyoketa/n/n915ad7a538d8 と「悩める理系高校生よ、「理学部」を選ぶのはまだ早い」by 武田ひか https://note.com/sunamerinikki/n/nd0a2336a9a7b に触発されたものです。まずはお二人に感謝。「数学が苦手だから法学部にしよう」そう考えて法学部を選ぶ高校生は結構多いはずですし(私も,統計とったわけではないですが,肌感覚でそういう感じはもっています。 もっと言うと,「高校までの数学めっちゃ得意でした」って方が少数派。)進路指導的な話をする大人たちも(その人が法学部出身ですら)同じように言うことが多いと思います。でもなぜ自分は高校までの数学が苦手だったのか,その原因がわからないと,法学部の4年間が「大学生活エンジョイできて,大学卒業って資格も得られてよかったね。 だけど法学部で学んだことって社会じゃあんまり役に立たないよね。」で終わってしまうことにたいていなっちゃいます。……そういう風に言う大学法学部卒の大人たちばかりじゃないかなあ?それでもいいならそれはそれで止めないし,実際それで社会は現にうまくまわっている?し。(うまくまわってはいなんじゃないかというのが今次の事態ではないかと思うけど……。 まあそれは別の話なので,今日はしません。)心理系の方や理学系の方と違って法学部にアドバンテージがあるのは,「まあ想像されているとおりのことをやっている」点だと思います。法律についての知識を講義で伝え,ゼミで「調べて,発表して,質疑応答する」ことで学びを深め試験ではたいてい「与えられたお題に対し,当意即妙な文章を作り出して書く。」ということで,それが一定線を超えると単位がもらえる。そして今多くの法学部では卒業論文を必須としていないので講義-論文試験ー単位取得の積み重ねで卒業できちゃいます。……あれ?数学関係ないじゃん?※大学教員各位,これでいいと世間では思われているんですよ! あなたの研究成果は「ほぼ」伝わっていませんよ~。ところで……「当意即妙な文章」のところこれ,「知っていることを整理して書きなさい」問題だとまあ記憶力勝負になるし,レベルが低いとたいていは持ち込み可能な六法全書からそれっぽいものを拾えれば書けてしまいます。まあ,この程度で卒業できちゃえば,そりゃあ「社会じゃあんまり役に立たないよね。」だよね。大学でやったこと,何も残らないもん。これでは。ところが,そこでちょっと「法学(法解釈学)」っぽい問題を出すことにするととたんに差がつきだすんだけど,「なぜ,自分は書けないんだろう。」もしくは「なぜ,単位認めてくれないんだろう。」って学生,結構出てきちゃいます。さらに,その前段階,ゼミで「調べて,発表して,質疑応答する」。最初教員は黙っているけど,後の方でおもむろに発表者に質問する。途端に立ち往生する発表者。きちんと情報を集めてきたはずなのに,なんで?ここに「高校までの数学」の「ある項目」が影響してくるんです。ところで法解釈学って,「法律って何書いているかわかりにくいから,その意味を教えてくれるのが法解釈学なんでしょ?」って結構思われているんだけど,それ,微妙に違います。法律に意味や解釈をつければそれは法解釈?そんな甘いものではないのです。それが「学」である以上「学問」の基本形はおさえていますし「法」という「社会現象」を研究対象にしているから「社会」を研究対象にする「社会科学」の基本形もまたおさえています。具体的に言うと,「全ての法解釈って,実は単一もしくは少数の原理から説明できるんじゃないか?」ってことから「相互に矛盾のない解釈を明らかにする」作業が要求されて,しかもそれは「紛争解決は法の第一の機能」な以上現に存在する紛争を解決できるものでなければならないのです。……とたんにハードル上がったでしょ?実はこの話,たいていの大学では割と初期に教えています。法学入門だとか法学基礎とかってタイトルで。ところがこの部分自体を直接試験に出すことはまずないから学生の方が「なんでこんな話するの?早く法律の内容を教えてよ。」になってしまってたいてい流されてしまいます。さて「相互に矛盾のない」しかも「現に存在する紛争を解決できる」矛盾?矛盾ってどういうことでしたっけ?そう矛盾であることに気づけないとだめです。「Aである」ことと「Aではない」ことは同時に存在し得ない。これが矛盾。これを取り扱うのは「論理(ロジック)」ですよね?この論理(ロジック),高校時代まででさんざんやらされています。どの科目で?もうおわかりですね?そう,数学(算数)なんです。一番典型例は証明問題なんだけど,公式に数字をあてはめて計算させるというのも「公式がある」「その公式に数字を入れて計算する」「その計算結果はこうである」これもまた論理です。法の1つの規定だけでは答が出ない。しかしこの規定とこの規定を組み合わせれば,こういうことが言える,だからこうなのだ。この展開の「論理(ロジック)」です。さて,あなたが数学苦手な原因,自分でわかっています?「公式はどうしても覚えられない。覚えていたら計算ならできるのに。」それであれば心配いりません。確かに法学でも最低限覚えなきゃいけないことはあります。しかし,試験の時は,たいてい六法全書が持ち込み可です。先生によっては資料をなんでも持ち込み可にしている先生もいます。暗記力勝負ではありません。そこにある資料から論理を組み立て,現実の問題にあてはめて答を出す。それができれば試験は高得点ですし,この所作が身につけば,社会に出た時に大きな戦力になることは間違いないでしょう。※個人的には大学で学んだことが社会に即役立つようでは問題だという立場なのですが……。 おっとっと,脱線脱線。「なるほど!自分は理詰めが苦手だったんだ!今から数学やるのも間に合わないし,なんとかなりませんか?」なります!そんな複雑なことを要求するわけではありません。ただ,法学ではそれが要求されている,自分はそれが苦手である,だから,そこを意識して学ぶようにしよう,そう思ってもらって,実際に教員を活用できれば全然問題ありません。だけど……,なぜ数学が苦手なのか,自分でもわからない?苦労することを覚悟の上で,法学部に来てくださいね。さて,最後に肌感覚の話が実は北海道大学法学部の肌感覚でもあったという話をします。私が北大の文III系を受けた当時(北大文III系は,教養部の成績と本人の希望によって, 9割が法学部,1割が経済学部に振り分けられるコースでした。)共通一次試験を受けた上で二次試験を受けるのですが共通一次5教科7科目1000点満点を300点に換算し二次試験300点を「小論文200点,英語100点」に割り振ってその合計で合格者を決めていました。いい?小論文と英語だけですよ!!……あたし進路指導の先生や周囲から相当心配されました。「北大大丈夫か?」「京都大学とかもっと得意科目活かせる大学あるだろ?」「おまえ,小論文って,振り切ってくるからなあ(余計なお世話!)」……英語と社会が比較的苦手,数学と理科が大得意(数学は満点か否か,物理も化学もそれに近い)だったのです。その私がなんとか現役で北大に入って(経緯は言いたくない(笑)おまいらの心配は正解だったよ。)大学の教養部時代のゼミの他の学生の発言なり,もしくは会話で得た肌感覚が「数学が苦手だから法学部にしよう」って学生の多さでした。……で,「え?え?」と思うことがままあったのですが……。たぶん最初は「論理は小論文で見るもんだろう」と思っていた北大法学部教授陣,翌年だったか翌々年だったかその次の年だったか二次試験に数学入れましたね。(おしまい) - sumiyaki likes this.