その日の陽差しはまぶしくて、相手の姿がシルエットしか見えなかったのでしょうがない。
出会った異性が「わるくない」ハトだったなら、そのままつがいになろうと決めていたぐらい、キジバトのわたしにとって出会いは貴重なものだった。駅前に集まっているカワラバトの集会で相手を選べるほうがより好みの相手に出会えそうだな、と彼らがうらやましくもあった。
わたしが初めてであったオスはカワラバトだった。少しほっとしたし、相手も同じ気持ちのように見えた。種の違うわたしたちはつがいになる必要がないからだ。
「仲間のメスかと思って。失礼しました」「わたしも仲間のオスかと思いました」わたしたちは関係性を持たなくてもいい相手を前にして饒舌になった。こんなにおしゃべりしたのは初めてで、とても楽しい時間を過ごした。
彼が去ったあと、今日までいろんなオスに出会ってきたけど、誰よりもあの日のオスが一番いいハトのように思えてならない。わたしは誰とも一緒になる決心ができず、ただ枝の奥に身を潜めた。