「こんにちは。なにをしているんですか?」「……」街灯のてっぺんで出会ったハトは、気難しい顔でこちらをちらっと見たけど、挨拶を返してはくれません。
「今日はこの季節にしては暑かったけど、夕方になるとだいぶ涼しいですね。このまま夏になるのかな」「……」「夏になったら祭の季節ですね。祭の次の日の朝はいろいろ落ちてて、駅前も楽しいですよね」「……」遠くを見たまま何もしゃべりません。ひとりが好きなのかな。
「あの、あなたの頭の模様、変わっていますね」「……!」急に振り向かれてびっくりした僕は早口でつづけました。「僕はごく一般的な二本帯の模様だから、あなたの、春の高山の残雪のような模様がかっこいいと思ったので」
「そんな風に言われたのは初めてだよ。いつもみんな、頭にフンでもかぶったのか? とか言うんだ。高山の残雪、いいね、気に入りました。そういえば、夏祭りですか? 私は綿あめの棒をなめられる良い場所を知っているので、今度教えてあげます……」
残雪の頂の向こうに赤い夕焼け空が見えるまで、僕たちは語り合いました。