Tor(トーア、英語: The Onion Router)とは、TCP/IPにおける接続経路の匿名化を実現するための規格、及びそのリファレンス実装であるソフトウェアの名称である。名称の由来は、オリジナルのソフトウェア開発プロジェクトの名称である「The Onion Router」の頭文字である。
概要
Torは、Microsoft WindowsやmacOS、Linux等の各種Unix系OSで動作する。「オニオンルーティング」と呼ばれるカプセル化技術により、複数のノードを経由させて通信を行い、匿名性を高めている。暗号化が、「あたかもタマネギの皮のように、1ホップごとに積み重ねられること」が名前の由来である。現実装ではTCPで通信が可能だが、UDPやICMPなどのプロトコルは使用することができない。
通信を秘匿するにあたって、まずTorは各ノード間に回線を構築する。このとき、ユーザは各ノードと共通鍵を共有する。この鍵はユーザと1つ1つのノードのみが共有している。回線構築後は、この回線を使って通信を行う。データは先述の共通鍵を使って暗号化されるが、このとき、データは終端ノードから順番に暗号化される。ユーザはこのデータを構築した回線に渡し、各ノードは共通鍵を用いて、1枚ずつ暗号化の層を剥いでいく。こうすることで、終端ノード以外はデータの内容を読み取ることができなくなる。
Torは主として接続経路を匿名化するものであり、通信内容の秘匿を保証するものではない。Torでは経路の中間に限り暗号化を行っているが、経路の末端では暗号化が行われていない。通信内容の秘匿まで行いたい場合は、TLSなど(HTTPSやSMTP over SSLなど)を用いて、別途暗号化を行う必要がある。しかし、Torの隠し機能として後述の Hidden Service というTorサーキット上でサービスをホストする機能があり、これを用いれば末端の通信も暗号化される。
Torは当初、オニオンルーティングの開発元でもある、アメリカ海軍調査研究所 によって支援されていたが、2004年以降は電子フロンティア財団 (Electronic Frontier Foundation) により支援されるプロジェクトとなった。2005年11月以降はEFFによる金銭の支援は終了した。ウェブホスティングは継続されている。
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