意気揚々と鬼ヶ島での鬼との戦いに赴いた桃太郎であったがしかし彼はあまりにも鬼という生き物を過小評価していた。お供の犬猿雉も既に倒れ最早自分一人のみ。しかし鬼は未だ多勢、万事休すと思われたその時であった「全く見ちゃ居られないよこの糞餓鬼」後ろから聞こえたその声に振り向こうと半身を逸らした刹那、桃太郎の横を駆け抜ける風。慌てて前を向くと恐るべき速度で翻る矮躯、その手元の銀光が閃く旅に次々に鬼が倒れて行く「婆ちゃん!」と、桃太郎は思わず歓喜の声を挙げる。育ての親にして己に剣を仕込んだ彼女はどうやらまだ血の繋がらない息子の事が心配で鬼ヶ島までついて来てくれていたのだ「いつまでも糞餓鬼気分が抜けない小僧だねぇ。さっさと構えな、まだまだ獲物は残ってンだ、大盤振る舞いって奴だよ!」返り血に染まった面をあげて婆さんが凄惨な笑みを浮かべると桃太郎も刀を構え直す。「なんなんだあのババァは!」鬼達が悲鳴にも似た声をあげると婆さんはまた1人、鬼の首を斬り落としながら答えた「知らないのかい?私の仕事を?お婆さんは川へ『洗濯』に、ってね。ゴミを斬り捨てて流すには川が一番さね」