「やあ人間、次は何に生まれたいですか?」駅前の花壇のヘリに座ってぼーっとスマホを見ていたら、いつのまにか足元にいたハトからそう聞かれて驚いた。
「え。そうだな、お金持ちとか、美人とかに生まれたいな。別の国に生まれるんでもいいな」あまり深く考えずに言うと、ハトは「それは、また人間に生まれたいということですか?」と質問を続けた。「……そうだね。ハトは何に生まれたいの?」
「私は寿命も近いのでこの頃よく考えるのですが、昨日カナブンを見て『硬くてカッコよくて、色もキラキラ光っててかっこいいからカナブンもいいなあ』と考えたところです。それまでにも、カラスがいいなあとか、猫になろうかとか、蜂とか、花とか木とか……いろいろ考えました」
ハトは私の方をまっすぐ見上げると、「人間として生きているあなたが、また人間に生まれたいという。それほど人間とは良いものなんですね。人間として生まれることに興味がわきました」と言い、満足そうな顔をして去って行った。
私はどこを見るともなく顔を上げ、人間として生きていることについて改めて考え始めたのだ。