乗客乗員26人を乗せた観光船『KAZUI』が、知床の海で消息を絶ってから3日目を迎えました。これまでに11人の死亡が確認され、15人の行方が分かっていません。
関係者に話を聞くと、運航会社の安全管理に疑問を呈する声も聞こえてきました。
去年3月に運航会社を解雇された元従業員は23日、『KAZUI』が出航する直前に船長と話したといいます。
運航会社の元従業員:「(船長に)気をつけろよって。初めて出るからさ。船のところに行って、運転席のところに行って、波があるから気をつけろよって。(Q.かなり波も高かった?)いや、ない。その時は。出て行ってもいいけど、午後から悪くなるからって。急に変わる。行きは何ともないけど、帰りは怖いんだ」
『KAZUI』が、ウトロ漁港を出航したのは23日午前10時。知床岬で折り返し、午後1時に戻る3時間のコースでしたが、午後1時20分ごろ、カシュニの滝付近から「船首が浸水した」と救助を要請。そして午後2時ごろ「船首が30度ほど傾いている」と伝えたのを最後に連絡が途絶えました。
別の運航会社の船長:「やめといた方がいいぞとは言った。『はい』とは言ったけど、そのまま(出航した)」
知床半島のオホーツク海側沿岸では、午前10時までは比較的、風は弱めでしたが、午後1時には、沖合で風速15〜20メートルもの風が吹いていたとみられます。
『KAZUI』の運航会社を知る人によりますと、2〜3年前に社長が代わり、社員にも変化があったといいます。
運航会社を知る人:「一流のベテランばっかり4〜5人いた。船長も責任者が4〜5人いた。それを(社長が)全員解雇した。経験のあるものは給料が月30〜35万になる。でも全員解雇してバイトを集めれば、15万か20万で頼める」
沈没したとみられる『KAZUI』は去年、2回事故を起こしています。5月に漂流物との衝突事故を起こし、6月には、今回と同じ豊田徳幸船長が座礁事故を起こしています。その時、乗船していた人に話を聞くことができました。
座礁した際に乗っていた客:「(Q.潮の状態は)そこまで荒れてはなかった。よく見る感じの、波もちょっとあってという感じ」
船には、若いカップルや子ども連れの家族など、15人前後が乗っていたといいます。出航してから約10分後のことでした。
座礁した際に乗っていた客:「砂浜から50〜60メートルくらいは沖にいたが、結構スピード出てる時に、船の底が岩に当たったようなドン!って1回なった」
船はすぐに停止、豊田船長が説明のために出てきたといいます。
座礁した際に乗っていた客:「『船が座礁してしまいまして、本当に申し訳ございません。海上保安庁からの聴取等があるかもしれません』と泣きながらおっしゃっていました」
「船体に亀裂が入っていた」という同業者の話もありましたが、『KAZUI』は20日、国が定めた船舶検査をクリアしています。しかし、21日の海上保安庁の安全講習では、船の位置情報を示すGPS装置が外されていて、豊田船長は「調整のため、業者に預けている」と話したということです。法的には問題ありませんが、27日に安全講習をやり直す予定でした。
横浜港周辺をクルーズする観光船では、操舵席にGPSが設置されています。
横浜で遊覧船を運航、永井等船長:「陸地から離れている時はそんなに危険な所はないと思いますが、どんどん陸地に近くなると危険な所もあるだろう。極端に浅くなる所とか、前方を見ると人工漁礁があります」
安全運航のためには、欠かせないものだといいます。
横浜で遊覧船を運航、永井等船長:「沿岸部は特に注意して見ます。風が吹いたり、潮が速い時は活用する必要がある」
事故当日『KAZUI』にGPSが付けられていたかどうかは分かっていません。地元の漁師は、去年も同様の状況を見ていました。
地元の漁師:「去年もむちゃするなという日に運航していたし、事故がなきゃいいなと。たまたま事故にならなかっただけ。去年1年見ていて特に(感じた)」
去年、解雇されたという元従業員は、社長の指示があったのではないかと感じています。
運航業者の元従業員:「(社長は)海のことは分からない人だから、船の形状できょうの波だったら他社なら行けるけど、うちの船は行けないとかがある。そういう時だと『なんで他は走ってるのに』とかはあった、何回も」
『KAZUI』は他社よりも運航を1週間早く始めていました。
運航業者の元従業員:「コロナで金も多く借りるようになったというようなことも聞いていたから(料金の高い)長いコースを最近始めた。私がやめる2年ぐらい前から(知床)岬のコースも。他の会社はやっているからやろうという話になった」