「今日、文法学の基礎知識は、日本語についてよりも、むしろ英、仏、独等のヨーロッパの諸国語について与へられる方が多い。そこで、日本語の文法についても、ヨーロッパの諸言語の文法を基準にして考へたがる。その結果、割切れない多くの現象に行き当るのである が、言語は伝統的なものであり、歴史的なものであって、思考の法則が普遍的であるやうには、言語の法則は一般的な原理で律することが出来ないものを持つてゐる。 日本語の文法は、日本語そのものに即して観察されないかぎり、正しい結論を得ることは困難なのであ る。ヨーロッパの言語の法則が、 一般文法の原理であるかのやうな錯覚を打破することが何よりも大切である。」#時枝誠記 『日本文法』