散歩コースに郵便ポストがあって、その上にはだいたいいつも関係ないものが置いてある。道に落ちていた拾い主が「きっとこれは大事なものだろう」と判断した片方だけの靴とか、子供のおもちゃとか。今日はそこにワインレッドの眼鏡がおいてあった。丁番から先が無い眼鏡。きっと落とした時に丁番が折れたんだ、と思いながら通り過ぎ、帰りにまたそこを通るとき、道路を注視して歩いたらつるを見つけた。大事な部分を失った眼鏡のつるは、何か昆虫の脚のように私には映って、そっとそこから目をそらしてとぼとぼと家に帰った。なんだか切ない気持ちになった。