「元も子もないことを言えば、この社会はデフォルトでトランス差別的に設計されていて、多くの人にとってはトランスジェンダーなどどうでもいい存在なんだろう。だから、トランスの権利擁護やトランスの経験に根ざして正面から社会正義を訴えるような本がたくさん売れるなんて、誰も考えない。むしろ、トランスの存在を馬鹿にしたり、その政治的要求を「過激だ」と揶揄したりするような言説の方が、人々の受けが良いと考える人が出てくる方が自然だ。
でも、待ってほしい。ヘイトや冷笑主義に魂を売る前に、出版社には踏みとどまってほしい。日本にはまだ、『トランスジェンダー問題』がきちんと売れる土壌がある。知的なニーズがある。もちろんこんな分厚い本が読めるような生活上の余裕がある人は限られているし、そうした余裕は社会からますます切り詰められている。それでも、まだこのが売れるだけの需要が、ちゃんとある。」
そうなんだよね。
それと同時に、もの凄く苦い世代的自戒も込めて、それだけじゃないんだ、とも思う。