現在の「上手な文章」の原型みたいなものが出てきたのが一九六〇~七〇年代で、翻訳者、特に伊藤典夫と浅倉久志の二名が有名で、一九七〇年代までは翻訳作業に従事している=文章が上手、というのがあった。だから、村上春樹がヘミングウェイ、ヴォネガット、フィッツジェラルドを原文で読んで勉強したという話が出てくる。ただ、そのせいで浅倉の文体を模倣した説が出て、確か本人が否定していたはず。逆に言うと、海外の作家を参考にしないと上手い文章が書けないという印象が一九七〇年代にはまだあった。二〇一〇年代に海外の作家を模倣している、あるいは影響されたので上手だと主張する作家が何人いるかな()