私たちハトのための完全食「パーフェクトシード」が開発され、さっそく公園に設置された。栄養をしっかり摂れる上に、人間など他の動物と共通の病気を予防する薬効もあるらしい。
わかっているんだ、こういう作られた食物はおいしくない。自然の中で色々なものを食べるほうが健康にも良いに決まっている。
「体にはいいかもしれないが、おいしくはないな」
そう文句を言うつもりで、私も数粒ついばんだ。
なんだこれは。今までに体験したことのない……いや、むしろこれまで体験した最高の要素がこの一粒に詰まって、総合的に未知の食感を生み出している。
大きすぎず小さすぎない、くちばしで挟みやすい粒。サクッとした殻をつぶした途端にジュワっと豊潤な油がはじけ、殻を柔らかく変え舌を満足させた頃サラっとした液体になりのどごしも良い。新鮮でまだ青い木の実をついばんだときの芳香からえぐみを抜いたようなさわやかな香りが鼻を抜けていく。やめられない、とまらない、次々食べてしまう。
「体に良く味も良い、まさに完全食!」
「完全食! 完全食!」
私たちの語彙はすべて食に吸い取られ、完全食という言葉だけが残ったのだ。