STORIA法律事務所の弁護士が代理人を務めた、ウェブサイト売買(ECサイト事業の譲渡)に関する知財高裁判決(平成29年6月15日判決)を紹介します。 本判決は、商事法務2162号51頁、判例時報2355号62頁、ジュリスト2018年9月号135頁、法学セミナー760号121頁等で評釈されており、先例として一定の価値があるものと考えたため、代理人として守秘義務に反しない範囲で取り上げる次第です。 知財高裁平成29年6月15日判決 競業行為差止等請求控訴、同附帯控訴事件 (原審・東京地裁平成28年11月11日判決) 【事案の概要】 X社は、ロリータファッションやガーリーファッションなどの中古衣類を販売するウェブサイト(以下「本件サイト」)を運営していたY社から、本件サイトを700万円で譲り受けました。 ところがY社は、本件サイトをX社に売却した直後に、本件サイトと同様にロリータファッションやガーリーファッションを取扱う別の中古衣類ECサイト(以下「競合サイト」)を立ち上げ、競合サイトで中古衣類販売事業をはじめました。 そこで本件サイトの買主であるX社はY社に対して、会社法21条3項に基づき、競合サイトにおける事業の差止と損害賠償を求めたところ、いずれも認められたという事例です。 当事務所はX社側の代理人でした。 ウェブサイトの売買契約は、サイト売買を専門とするマッチングサイトを仲介として行われることが多いのですが、本件のX社も、サイト売買マッチングサイトを介してY社と知り合いサイト売買契約を締結しています。 サイト売却直後に売主は競合サイトを立ち上げた 当事務所がX社から受けた相談内容は以下のようなものでした。 サイト仲介業者で中古衣類のECサイトを購入しようと思い、仲介業者に連絡をした。 Y社からは本件サイトから得られる売上や利益を示され、マニュアルやノウハウの引継ぎも行ってくれるということだったので、これであれば投資金額は回収できるだろうと考え、700万円で本件サイトを購入した。 その後、Y社から在庫やノウハウの引継ぎを受け、古物商許可の取得等、サイトの運営に必要となる手続きを経たうえで、本件サイトでロリータファッション等の販売を開始した。