けたたましいサイレンの音。振動。ここはどこなのだろうか。揺らめく意識。視界は暗く、電子画面にノイズがかっているような様相。
僕はいま、一体どうなっているのだろうか。
はっきりとしない意識のまま、しかし一つだけやや確信していることがあった。――僕はこのまま死ぬ。
力が入らないからだは、麻酔のせいだけではない、もう僕の体に活力がなくなってきていることを意味しているのだろうと思う。
そうか、死ぬのか。不思議と落胆はない。
ただ、ひとつだけ悲しいのは。
あの子。町外れのお屋敷に住む、小さな女の子。綺麗な飴玉のような、色違いの目を持つ、お人形さんのような女の子。
あの子を死ぬ前に、目に焼き付けられない。それだけがただ、悲しい。
#屋根裏家 #創作エンドロオル
Conversation
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依頼募集中 (yaneurake@gamelinks007.net)'s status on Saturday, 29-Sep-2018 21:57:59 JST 依頼募集中 - S.H. repeated this.
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依頼募集中 (yaneurake@gamelinks007.net)'s status on Saturday, 29-Sep-2018 21:58:35 JST 依頼募集中 「レイヴンに適合者が現れるとはな」
そのうち、誰かが部屋に入ってきたのがわかった。男の声だ。男は僕の顔をのぞき込む。僕の視界はぼやけて、焦点が合わない。
「どうする。生きたいか」
投げかけられた質問。耳が捉えたくぐもった音声は、確かに生きたいかと僕に聞いている。それは。僕は考える前に、口を動かしていた。
「生きたいよ、そりゃ」
あの子に会いに行きたいよ。
「……そうか」
男は頷き、それから医者たちになにか指示を始めた。僕の意識は遠くなっていく。
「生きろ、レイヴン」
男は僕をそう呼んだ。
#屋根裏家 #創作エンドロオルS.H. repeated this.