セックスをした事がなかったせいで雲になってしまったオタク、最初は空を自由に飛ぶ事ができて、煩わしい世の中からも、彼を責め立てるクラスメイトからも解放された喜びそのままに世界旅行をするんだよな。だけど、次第に彼は気付くんだ。自分はもう2度と、両親にも、親切なとなりの老夫婦にも、少ないながらも優しかった友人にも会う事ができないって。ヤツは泣くんだ。それが雨になって、残酷なまでに焼け爛れたアスファルトを癒す。人々たちは、ヤツが流した涙の清涼な冷たさを実感しながら天を仰ぐんだ。誰かに呼ばれた気がして。誰かが泣いてる気がして。