おはようございまーすーとーんとーんとーん、アスファルトの道路へ赤いゴムボールが跳ねてゆく、車道を軽快に飛ばしていた自転車が急ブレーキを踏む、だが危惧したように幼い子供がそれを追いかけてくることはない、自転車の乗り手はボールを拾い上げてあたりを見回す、その瞬間、信号を無視して少し先のの交差点をすごい勢いでトラックが通り過ぎる、乗り手はあのまま自分が自転車を走らせていたらと考えて背筋が寒くなる、ドンッ、という人生最後の音さえ聞こえてきそうだ、いつの間にか手にしたはずのボールがない、あたりに子供もいない。