ニーチェは落馬で負った障害が悪化して執筆が出来なくなり大学教授の職を辞した後、当時発明されたばかりのタイプライターを使うことでまた執筆ができるようになった。
「しかしこの装置はかすかな影響を彼の仕事に与えた。ニーチェの友人の一人、ハインリッヒ・ケーセリッツは彼の執筆のスタイルの変化に注目した。
ニーチェの散文詩は張り詰めた雰囲気になり、もっと簡潔になった。新たな説得力が加わり、まるでその鉄の機械が-不思議な形而上のメカニズムを通して-ページに印字される言葉に流れ込んでいるかのようだった。
「ひょっとすると機械を通して新しい表現が根付いているのだろうか。」ケーセリッツは作品の中には見つからないような調子で「私の考えでは、音楽と言葉は時にペンと紙の品質に左右される」と手紙を書いた。「君は正しい」とニーチェは返信した。「筆記具は我々の思考に参加するのである」」
"The Shallows: What the Internet Is Doing to Our Brains"
Nicholas Carr