先行研究を明らかにすることの重要性は広く知られている。マストドンのインスタンスの一覧をフェアネスによって評価するというアイディアについても、その先駆的な事例について明らかにすべきだろう。
私自身の貢献としては、レコメンデーション・フェアネスの概念は、以下の段階を経て洗練されていった。
本稿では、これとは独立に、インスタンス一覧のフェアネスの概念を発明していたかもしれない無名氏の貢献を紹介したいと思う。
日本Mastodonインスタンス一覧は、古参順、すなわち、インスタンス一覧に登録されたのが古い順に配列されている。この配列のアンフェアネスは複数の文書で指摘されている。類似した事例を挙げると、joinmastodon.orgとSearch Mastodon Toolsは、いずれも開設当初は古参順に配列されていたが、現在はそれを是正するプルリクエストが受理されている。
問題のインスタンス一覧は、Qiitaの記事として作成されており、編集リクエストによってインスタンスを追加するという運用がなされている。
無名氏は、リストの末尾にインスタンスを追加するというルールを破り、その結果、編集リクエストは受理されなかったらしい。ただし、記事主は無名氏のコメントをすべて削除しているので、無名氏の実際の主張を知ることはできないし、無名氏のハンドルネームも不明である。
キリスト教で異端とされた者たちの著書は容易に焚書されてしまうので、現在の学者たちが彼らの主張を知る手がかりは、異端を弾圧してきた者たちが異端の思想を (さまざまな歪曲や偏見を交えながら) 紹介した文書である。記事主は無名氏のコメントをすべて削除しているが、記事主が無名氏を非難しているコメントは残されているので、それを通して無名氏の行動を推察することができる。そこから言えることは、無名氏はおそらく、インスタンス一覧のフェアネスという概念の発明者であるということである。
もし記事主がインスタンス一覧のアンフェアネスを是正する行動を取っていれば、このインスタンス一覧は、インスタンス一覧のフェアネスのために行動した最初のウェブサイトとなっていた可能性がある。その機会を逃し、無名氏を単なる荒らしかクレーマーであるかのように扱ったことは残念である。