2019~2020年という近未来を舞台とした5つの連作短編集。いずれも主人公は同じ。マストドン小説「巨像の肩に乗って」もようやく収録されている。マストドンをフォークしDMを暗号化する機能を追加した「オクスペッカー」を取り巻く物語。「マストドンは、2016年にオイゲン・ロチコというドイツ人エンジニアが、GNUソーシャルというSNSのプログラムを参考にして作ったプログラムだ」なんて文も出てくる。
藤井太洋氏の作品が爽やかな読後感を残すのは、技術やハッカーコミュニティに対する楽観的な信頼と、技術でもって新しく世界を切り開いていくという前向きな物語だからだろう。