"従来、政治と科学は別々の分野だと思われてきました。私たちも政治家が科学を理解することを求めてはきませんでした。科学と技術の進歩が緩慢で、それに政治が追いつくのを待っていられる時代はそれでもよかったのです。しかし今は科学と技術の進歩があまりにも速く、政治家がいま起こっていることを理解する以上のスピードで世界は変わってしまっているのです。(中略)もうすでに政府がやるのは管理だけで、指導性を行使することはなくなっています。政府がやっているのは日々の営み、つまり道路の舗装とか教師の給与の支払いというような国の管理だけで、これからのち二〇年間、三〇年間、どのように国をリードしていくかというヴィジョンは不在です。これは右派とか左派だからというお話ではありません。今日の政治においていかなる政党も、三〇年、四〇年後に人類がどこへ向かうのか、たしかなヴィジョンを持っていないのです。これは科学的、技術的なリアリティを理解できていないためです"